ZR’s Log

Twitterで書くには長過ぎる話を置いておく場所。TrySailからクウガやゲームまで、思いついた事をメモのように書き連ねていきます。

見えずとも解るもの

 カーテンの隙間から射す光に命を吹き込まれたかのように、その瞳は輝いている。だが微動だにしないのは、閉じ込められているからなのかもしれなかった。

 「急すぎるんだよな、まったく…」

 言われてみると、確かに思い当たる節はあった。妙に強い足腰や肺活量、何よりその髪色。深くは詮索してこなかったから疑問に思わなかったが、意識してしまうとやはり気になってくる。

 だとしても、だ。どうしてそこまで彼女は急ぐのだろう。

 改めて渡された紙を眺める。紀伝とも言える血筋の記録。これが彼女の朧げな記憶を呼び覚ました。その衝動に突き動かされるかのように、彼女は留学を決めたのだ。いささか早計なのではないか、と諭そうとも思ったのだが、彼女の目がそうさせなかった。あれを曲げられないことなど、よくわかっている。

 確かに衝動は時として驚異的な力を発揮する。目の前にいるこいつも、ある意味衝動から生まれたといっても過言ではない。…と。

 「ああ、そうか。そうだな。」

 きっかけは衝動だったかもしれない。だが、決断したのは俺だ。衝動の中に紛れもなくある意志。

 「あいつが望んでるなら、俺にできることは一つ、ってか。」

 そうだ、それがあいつの望むことなら、俺はあいつを信じてやればいい。

 カーテンを開け、まだ少し白んでいた頂を仰ぎ見る。

 「3度目、行くか。」

 南からの眩しさが色を変え始めていた。