雨。
空は黒く、一向に光は射さない。過ぎ行く時を忘れさせるほど。
自分の中にある感覚だけを頼りに、この手を動かす。だが目の前は空のように暗く、形にならないそれに、ただ憂うばかり。一体何度投げ散らかしたのだろう。思考の発露は、どれも価値なく壊れている。
このままではいけないとわかっていても、抜け出す術が見つからない。何をすれば答えにたどり着けるのか。目指す姿が明確すぎるが故に、その差を埋めることのできない自分の力の無さが際立つ。
また一つ握りつぶしてしまった拳を包んでみる。まるで祈っているかのようだ。それだけでは、どうにもならないのに。
そうだ、自分ではどうにもできないのだ。これを完成させたとして、取り戻せるわけじゃない。宮参りでもすればよかったのだ。なのにどうして、こんなことをしているのか。苦しみ続けるこの道を歩んでしまった、その理由はどこにあったのだろう。
時計を見ると、随分と時間が経ってしまっているようだった。だが本当にそうなのだろうか。何も変わらぬ景色が、現実を否定しようとする。刻まれた時の正しさを捻じ曲げようとする。
そう思いたいのか。
何もせず過ぎる時間と、何もできず過ぎてしまう時間。自分が無為にした時間は、後者を感じる、いやそれすら叶わぬ者に、あいつにとって、どれほどの価値があったのだろう。何もなかったのだ。同じものを見つめているだろうけれど、きっとそれすら知る由もない。
そうだ。何もないままではいけないのだ。いつか迎える時の為に、その先で失った時を取り戻すために。手を差し伸べることのできる自分である為に、その手を掴んでくれるあいつにふさわしくある為に。そう、誓ったんじゃなかったのか。
今ならわかる。答えがどこにあるか。
今度は1人の旅路。もう一度あの地を踏みしめて、その先を見つける。1人だが、1人じゃない。必ずこの先で、あいつが待っているから。
躊躇いなく開かれた扉の向こう、青が射す。