この日を迎えるにあたって、思い返していたのは1年半近く前のことだった。彼女自身の曲だけで繰り広げられる青い時間。個々が独立した世界にありながらも、彼女という軸でもって束ねられた時空。その中でいることを許された、たった2時間。
感覚が狂う、だからこそ感じられるありえないほどの密度。靄を脱した時、視界の輪郭が変わるような、光を見出しているような。
そんな瞬間が、またやってくる。他の誰でもない、彼女の舞台だからこそ見える景色が、また。
1曲目:Defiance
バンドサウンド映えするイントロが始まりを告げる。聴いた瞬間、まさかTOSの後に出たSingleで始めるとは、と驚いた。同時に、ここが探していた新たな世界であることに気づく。
ど頭からバンドサウンドが光る楽曲で、一気に引き込まれていった。
2曲目:Eternal
イントロの瞬間に、あ!となった。先ほどのDefianceはこの曲と相対する。
Eternalが黒ならばDefianceは白。カップリング含めてCD単位で真逆なこの2曲がこう並ぶことが、なんとも嬉しい。
「この世に生まれ」でダンサーさんたちを跪かせていくのが好きなんですよね。
そもそも思い入れが強すぎる1曲なので、新しいアレンジとともに聴けることがすごい嬉しい。
3曲目:チョ・イ・ス
生バンドイントロを聴いて、この曲のような気がしたけど早すぎないか?と思っていたが、曲名が呼ばれてやはりそうだったのか、となった。
盛り上がる曲で会場のテンションを上げて、この曲で一気に一体感を生み出す。たった3曲で青い世界は完成した。
ステージの形をふんだんに活用し、右へ左へ、そして前へ。会場にいる全員へ届けようとする姿が素敵だった。
ところで、チョ・イ・スを英語にした上で3曲の頭文字を並べるとDECで10年を意味するDECADEの前半3文字になるわけだけど、DECADEの半分、つまり5年を意味する曲順だったりは… 深読みが過ぎますかね。
4曲目:Regeneration
好きなんだけどなにが、と言われると言葉に窮する曲。
初日は特に「また気づかない内に心が蝕まれていく」が刺さっていて。
しかしどうして、この人の歌はこんなにも心に響きやすいのだろう。やはり目の前にいる人が、この曲の主人公だからなのだろうか。
何度繰り返しても、天さんを応援できる人でありたいね。
5曲目:irodori
イントロが流れた瞬間に会場が赤に変わることを考えると、この曲の存在感はすごい。まるで、幾度とないループの中に赤を纏い続けていた雨宮天がいたかのよう。
バンドだけじゃなくて管楽器も欲しい、と思ってしまった。次はオーケストラライブですかね…
6曲目:Abyss
Regenerationのブロックで歌われるとは思っていた。
今回は本当にすごかった。歌唱という枠を超え、演技を織り込んだミュージカルのよう。
ステージライトが白と青で使い分けられていたり、スクリーンに映る天さんが2人だったりと、堕ちた者と手を伸ばす者を表現しているようだった。
あのもがく姿がまさに深淵で、その上で歌っているのに声にならない叫びをあげているようでもあった。
7曲目:月灯り
昔から歌い続けたきた歌、という語りから、振り返る過去はない、と歌うのずるすぎませんかね。
チョ・イ・スもそうだったけど、意図的に低くしてるのかな。
8曲目:誓い
最初の数音だけでこの曲ってわかるくらい特徴的なんだなっていうことに気づいた。
天さんとキーボードだけで奏でられる旋律の儚さ、バンド全体と奏でられる旋律の勇敢さ。ライブで聴くこの曲はいつも2つの面を見せてくれる。
あのドレスで花道をこの曲と共に歩く様は、なんだかウェディングのようでした。
9曲目:メリーゴーランド
突然始まる語り。籠の檻。背筋の凍るような言葉の数々。そして、2周目へ。
そんな輪廻から抜け出すきっかけは強烈な光。現れるのは、拘束された雨宮天。
初日はなにが始まるか理解できない状態から、この曲のイントロが流れて終わらない輪廻を表現していたことを知る。
2日目はその語りではないが、この輪廻の中に体を委ねたい気分だった。
メリーゴーランドは止まらない。
10曲目:羽根輪舞
こんな形の羽根輪舞がいままであったか?いやなかった。連番者に白翼ではないって言われてまさにその通りだなと。まるで黒翼が舞っているようで。そんな解釈もこの曲にはある。
11曲目:VIPER
メリーゴーランド、羽根輪舞を経て、覚醒した魔女の誘惑。
魔女になってしまった救われない彼女。このブロックがこの曲で終わってしまうことが、なんとも物悲しい。
天さんがステージを後にしてからのインストパートが結構好きで。もうインスト専用曲を作って欲しいくらい。
12曲目:火花
リサイタルに合わせて1番のみ完成していた雨宮天作詞・作曲の歌がついに幕張で完成。
これで3回聴いたことになるのだけど、やはりすごい。余韻の残る歌詞、それでいて燃えるようなメロディ。いつかじっくりと聴きたいな。
13曲目:RAINBOW
挑戦を無事終えられたので今度は声を聞かせて欲しいとのことで。
この曲が作り上げる一体感は格別。本当それに尽きる。
14曲目:Lilas
この2曲を連続にしてくるのは卑怯。
RAINBOWが作り出した一体感をさらに増して、これが最後みたいな盛り上がりを見せた。
またこの場所に帰ってきたいな。
15曲目:PARADOX
可愛いって言わせてやるからなー!という天さんの10(てん)枚目のシングル。
実際振りが可愛い。
しかし、ライブでは扱いが難しそうな曲だなと思った。今回はこの曲を独立させてしまったわけだし。
16曲目:Velvet Rays
ダンサーさんと千手観音みたいになってるから仏に見える。
相変わらずサビの振りが好きで真似しちゃうんだよな。
17曲目(day1):Marvelous scene
生バンドで聴きたかった曲。単純に思い入れが強すぎるのもある。
今まで見てきた姿がそこにあって、だけど間違いなく変化もあって。
Marvelous sceneで拳を握る姿が、美しい未来をこの手で掴むかのようで。
僕らはここにいる。だから、天さんにはずっと前を向いていて欲しい。その手助けになれるように、僕も応援し続ける。
18曲目(day1):Breaking the dark
生バンドで聴きたかった曲その2。
Breakingに合わせて殴りつけるような振り、もっと流行って欲しい。めちゃくちゃ気持ちいいから。
Marvelousからこの曲に繋いでくるのは本当にずるい。ASHと合わせて3曲連続でやってくれる日はいつになるかな。
17曲目(day2):Silent Sword
イントロ聞いてやっぱり可変だったよな、と思わされる。
ほんとこの辺の曲はバンド映えする。
18曲目(day2):Trust Your Mind
先が見えぬほど、の素早い振りが好き。TOBのかっこいい曲は振りがすごい気持ちいい。
このかっこいいゾーンって流れに身を任せてるからあんまり感情残ってないんだよな。
19曲目:VESTIGE
この曲がこのブロックに入る曲だというのを忘れていた。
Never Never Neverで拳を三度突き上げるのだったり、Keep on tryingで拳を突き出したりする振り付けが好き。
20曲目:Skyreach
MCの時点でこの曲だってのはわかってたんだけど、青いスタンドマイク取り出されたら感動しちゃうよ。
曲が始まってから青いジャケットを羽織る。これがこのライブで唯一青い衣装を纏う瞬間。
このでかい会場でラスサビ前のオイオイできるのが嬉しくて嬉しくて。
この曲は5年間の歩みを体現しているというか。天さんもそうだし、ファンもそう。まだまだ歩み続けていきたいな、と思わされた。
アンコール
21曲目:GLORIA
センターステージに出てきて、全方位に向かって歌を届ける。
2日目は少し、だったのだけど、でも笑顔で。
22曲目:一番星
そう、とか、いま、とかは次までに歌えるようになるといいね。
素早く星を描く振り付けが好き。
23曲目:Song for
エンディング感の強いイントロ。
まさかこの曲が最後に歌われるなんて。最初の方でEternalとDefianceはCD単位で真逆と書いたけど、カップリングであるMarvelousとこの曲もそうで。どちらも天さんとファンの曲だと思っているけどベクトルが真逆で。
ファンの側へ向いているこの曲で締める。その意味を、深く深く心に刻み込んだ。
全体感想
ライブのマークが太陽になっているのは、Clearest、澄み切った青空を意味しているだろうか。会場内ではメインステージにまさに太陽として輝く他、センターステージにも魔法陣のように描かれていた。
ステージ構成も巧妙だった。メインステージは横方向に伸びていて、スタンド席の近くへ高さまで合わせられている。センターステージがあることで後ろまで自分を届けることができる。
毎回なのだが、この曲はどんな表現をしてくれるのだろうと考えている。天さんが世に送り出してきた32曲それぞれに異なる物語がある。今回はそれが1つではないことを示すようなライブだったように思えた。
1曲、1つの歌詞からでも、複数の解釈があり全く異なる世界を作り上げることができる。特に羽根輪舞はまさかだった。
逆に、Skyreachは原点に立ち返っていた。青いスタンドマイクもそう。青いジャケットを羽織るのもそう。その上で、この曲で会場が盛り上がることが、原点と今が繋がっていることを意味して。
タイトルのClearestは思い返せば、今を明確にする、という意味も持ち合わせていたのかもしれない。これからどう進んでいくべきか、それをこのライブを通じて可視化する。今の雨宮天の立ち位置とファンとの関係性、そういったものをここで違いが理解することで「次」へと進んでいくことができる。
アンコール後、もう一回の声に応えて現れた天さんは
「今日はこの5年間の集大成としてのライブで、今の雨宮天に出来ることを全て詰め込みました。 これがみんなが応援してつくってくれた雨宮天です。」
とおっしゃった。それは、自分が悔いの残らないライブを作ることのできた証なのだと思うし、そのライブが今へ繋いでくれたファンへの恩返しだという風に思えた。
会場に来た、場所も、いつから応援しているかも関係なく、全員の人を楽しませようという気持ちを節々から感じた。
そして、自分の理想を明確にし、今と理想のギャップを受け入れ、ギャップを埋める努力をし、そこから自分が納得のいく表現を生み出し、届ける。雨宮天という人のすごさを、全てで以って体現していたライブだった。
絶対に「次」を迎えたい。
最後に、雨宮天さん、天ちゃんダンサーズのみなさん、天ちゃんバンドのみなさん、スタッフさんに感謝を。