2017年の衝撃。何をやるかわからなかったリサイタルの内容は、まさかまさかの歌謡曲カバー。自分の好きなものを好きだと言い切り、見せつける。そういうことをしても受け止めてくれる、そんな信頼の下でリサイタルは生まれた、と勝手に思っている。結果的に第三回へと続いたが、正直あの空気では次は難しいと感じていたし、今回のMCでも語っていたように当人も同じだった。
2019年の驚愕。難しい、を可能にしたのはファンの声だったという。個人的には、好き勝手やっててほしいのだ。周りの声に耳を傾けるのは最低限で、雨宮天が望むもの、目指すもの、そこに向かってただ走り続けていれば良い。だが当然ながらそうはいかない。もしも実現するとしたら、ファンの声が雨宮天と同じ方を向き、押し上げるしかない。それを、やってのけたのだ。まるでそれに感謝するかのような大阪公演でのサプライズだった、と思う。
2021年の震撼。この時勢でイベントをやるにあたって、選ばれたのはリサイタルだった。雨宮天曰く一人カラオケであり、彼女が好きなことしてるのを見に行く。そんな温かい空間が、どこか冷えてしまった心にちょうど良い。どうしても、今イベントをやるには信頼が不可欠だ。だからこそ、あの時信じたものをもう一度。いつもより広い場所で、いつものみんなと、一緒に。
セットリスト
1.Emerald
2.十戒
3.いい日旅立ち(1回目) / プレイバック Part 2(2回目)
5.時の過ぎゆくままに
6.瞳はダイアモンド
7.for you…
8.レイニーブルー
9.つぐない
10.悲しみがとまらない
12.情熱のテ・アモ
ステージにはグランドピアノとシンセサイザー、そして喫茶店(スナックではない)。フリイジアで用いられたマイクがあったり、MVで着用していた衣装だったりとその世界観を色濃く舞台に落とし込んでいた。(2着目の衣装はテレ東音楽祭で着る候補だったようだ。)
自身の曲から始まったのは驚いた。これまでのリサイタルはどれも1曲目から飛ばしていたからだ。どこかワンクッション置くようで、ちゃんとオープニングナンバーとして成立するのは、意識の上に成り立っているからだろう。
比較的有名な曲と、そうでない曲(実際ほとんどわからなかった)の混ぜ方が上手いのはこれまで通り。絶妙にもっと歌いたい曲があるのではと感じさせつつも、自身が好きな曲であることに変わりはないので、のびのびと、それでいて繊細に歌い上げる。だからこそ終わった時にまたやってほしいと後ろ髪を引かれる。
曲への造詣が深いからこその演出も多く見られた。十戒の振り付けであったり、たそがれマイ・ラブを喫茶店で歌ったり。ロンリネスという単語ひとつ取っても、レイニーブルーのそれと悲しみがとまらないでは全く違って。レイニーブルーのロンリネスはピアノアレンジも合間って、か細く今にも消えそうで。悲しみがとまらないは曲調もあって客席にクラップを求めてみたり。ライティングも良かった。自身の曲であるEmeraldのバンと明るくなる瞬間であったり、フライディ・チャイナタウンのネオンのようなカラフルなライトだったり。
造詣が深いといえば、幕間のirodori(ピアノアレンジ)だろう。あのirodoriがピアノだけで、というところだ。
合間に曲との出会いを話すのも変わらない。やはり好きなものを語る人というのは輝いて見える。
そして忘れてはならないのが(知ってるぞ、とほくそ笑むことを許された)カバーアルバムだ。11曲と正直物足りないが、そこは第2弾に任せるとして。これまでのリサイタル歌唱曲から選りすぐりの10曲、ともう1曲。そう、Various SKYより、みずいろの雨である。いつかまた聴きたいと思っていたこの曲が収録されることがとても嬉しい。
こうなってくると、Various SKYの映像化も、何卒…
最後に、最高のリサイタルを作ってくれた雨宮天さん、スタッフの皆さんに感謝します。