ZR’s Log

Twitterで書くには長過ぎる話を置いておく場所。TrySailからクウガやゲームまで、思いついた事をメモのように書き連ねていきます。

私を照らしてくれた人

 「説明なんて一言で済むだろ? 圧勝、って」

 月ストはBIG4に2度目の敗北を喫した。I-UNITYでのIIIX戦、見紛うことない月ストのベストアクトだった。それでも、勝てなかったあの日から月ストを見ることは減った。

 それから何度も見に行った彼女たちのライブは、どこか精彩を欠いているように見えた。だがこの日は違った。正直、BIG4チャレンジという急に湧いて出た企画、どう見てもどりきゅんのパフォーマンスのためとしか思えなかったが、月ストは果敢にも挑むことを選んだ。そして眼前に広がったのは、I-UNITYを優に超える、圧倒的なパフォーマンス。もしかしたら、いけるかもしれない。そんな期待が胸に宿る。だが、BIG4はそんなに甘くなかった。復活したどりきゅんは(そもそもどりきゅんを見るのは初めてだったが)、自分の中のアイドルという価値観を壊しかねないほどの、別次元のパフォーマンスを見せつけてきた。

 結果発表を前に再びステージに上がった月ストの、琴乃ちゃんの表情は今でも忘れられない。あんな顔を見ても、再びステージに立って、今度こそ笑顔で終わってほしい。そう願ってしまうことのなんと愚かなことか。それほどまでに、私は月のテンペストに、長瀬琴乃に心酔していた。

 

 これは、アイドル長瀬琴乃に魅入られたあるファンの記録。

 

 琴乃ちゃんを初めて見たのは、確かNEXT VENUS GRAND PRIXで月ストが優勝した後のことだ。偶然動画サイトで目にした生配信。なぜか、見てしまった。人気ユニットのTRINITYAiLEと一緒に出演しているとのことだったが、そんなことはどうでもいいくらい、月のテンペストのパフォーマンスに、センターで踊る琴乃ちゃんに魅了されてしまった。激しいダンスの中に、心情のこもった繊細な振り付け。曲と同化するかのように、目まぐるしく変わる表情。それでいて、伝わってくる楽しいという感情。思わず、コメントを打っていた。

 「感動した」

 最後、琴乃ちゃんの口から、レボリューションジャムというフェスに参加することが告げられた。躊躇うことなく、私はチケットを買った。どうしても生で、彼女たちのパフォーマンスを感じてみたかった。

 

 そもそも、私はアイドルというものに疎い。だからフェスに参加すると言っても何からやればいいかわからなかった。とりあえず月ストの曲を聴いて、声音の若さに驚いた。当然か、NVGPからしばらく経っているし、最初の曲が出たのはそれ以前の話。ただこの1年もない期間の中でここまで成長していることに、彼女たちのアイドルにかける思いを感じずにはいられなかった。

 

 いよいよやってきたレボリューションジャム。他のアイドルのパフォーマンスももちろんすごい、人気アイドルが集まっていると言われるだけのことはある。

 初めて生で見たパフォーマンスは、正直ちゃんとは覚えていない。だがこれだけは言える。私には、やはりというか、月のテンペストが、琴乃ちゃんが一番輝いているように見えた。

 ステージを見た後の私の中には、もっと彼女のことを知りたい、これから先の成長が見たいという思いが渦巻いていた。

 

 友人に、最近アイドルのライブよく行くけど、どこがいいの?(本当はもっと丁寧な言葉だった)と訊かれた。

 まずは顔。言った途端結局そこかよと言い返されたが気にしない。月のテンペストのグループ方針なのか、抱く印象はかっこいいが最初にくる。琴乃ちゃんも違わずかっこいいのだけど、そこはまだまだ高校生。不意に見せる年相応の表情がかわいい。そんな表情をこぼすのは渚ちゃんといる時が多い気がする。

 次にダンス。月の名の通り、落ち着いた色に淡い輝きを宿す青のドレスが目一杯映える大きな動き。他のメンバーに着いてこいと言わんばかりの自信に満ち溢れた動きから、リーダーとしての自負を感じる。きっとその重圧に押しつぶされそうになることもあったのだろう。そんな心を解放するかのような激しい動きの中に、一人一人のことをちゃんと見ている彼女の優しさが具現化されたような細かな指先の動き、目線。繊細で、大胆で。

 最後に、歌声。私はThe One and Onlyの数少ないソロパート、迷いない笑顔の理由 月の光、あの歌い方が好きだ。歌詞の通り迷いなく芯の通った歌声。他の誰でもない、自分を決定づけるもの。

 大体全部じゃんと言われた。その通り、私は琴乃ちゃんの全部が好きだ。

 

 かくして友人を巻き込んだ私は、I-UNITYも月ストのステージは全て見に行った。だから、IIIX戦は終わった後本当に苦しかった。ライブを見て泣いたのは初めてだ。しかも、こんな悔し涙。見ているこっちがこんなだから、琴乃ちゃんたちはもっと辛くて苦しいのだろう。優勝したのが同期のサニーピースだから尚更だ。NVGPから差をつけられて… 考えるだけでも

 

 やはり引きずっているのか、それからの月ストは敗北続き。そもそも出演するライブも、琴乃ちゃんに会える機会も減った。そんな折、久々の大型ライブ出演が告知された。アイドルミュージックフェス、通称IMF。もちろん見に行った。ただ、この日は1人で。

 果たしてどんなステージになるのか、不安がないといえば嘘だった。I-UNITY以降のライブはどこかキレがなく、どこか勝ちを急いでいるようで。昔の方が好きだったとは言いたくない。あの敗北もきっと糧になる、もっと成長した姿を見せてくれる。そう信じていた。

 「最高のステージだったよーー!」

 IMFのステージでの月のテンペストのパフォーマンスは、完璧だった。最近の不調が嘘のように、輝いていた。

 

 

 その後のことは、最初に書いた通りだ。ここから一気に上っていけると思っていた私は、BIG4というあまりにも高い壁にI-UNITYの時以上の苦しさを味わっていた。きっとあの時よりも、彼女たちが立ち直るまでにかかる時間は長いだろう。

 それでも願ってしまう。月が太陽を覆い尽くすことがあるように、月のテンペストが、琴乃ちゃんが一番輝く瞬間を。